八綱弁証
- pcs9130
- 2025年6月20日
- 読了時間: 5分
更新日:2025年8月26日
私は普段こんなことを女性の患者さんに対しこんなことを言っています。
『冷たい飲み物はやめてくださいね』。なぜ?と訊かれます。現代医学的には理由なんてありませんよ。でも東洋医学的には、女性は陰性の性質があるから、冷たいものを飲むと更に身体が冷えてしまいます。男性と女性では性別が違います。個人でもそれぞれ違います。それによって生活スタイルも各々違ってくる。個人個人に対する指導はそれぞれ違うのです。これは『個別医療』とも言うのですが、これが東洋医学の考え方です。
本日は東洋医学独特の診察法である八綱弁証についてお話ししたいと存じます。
この診察法は湯液、つまり漢方薬や中医学の診断法の一つですから、はりきゅうの見方とはちょっと違うのですが、東洋医学独特の診察法としてはわかりやすいので説明します。八綱とは、陰陽虚実寒熱表裏の事を指し、四診より得られた情報に基づき、病位の深浅、病邪の性質及び盛衰、人体の生気の強弱などのデータを分析し、証しを立てて治療していく病性の分類法です。
では一つひとつ見ていきましょう。実証=体力がある、虚証=体力がない、熱証=体温が高い、寒証=体温が低い、表証=表面にでる、裏証=裏側に出る、そして陰陽で病性(病気の性質と盛衰)を判断します。
例えば、アトピー性皮膚炎になるこれは表側に出る表証ですね。潰瘍性大腸炎になるこれは裏証ですね。消化器は身体の内側ですが、竹輪と同じで発生学的には皮膚と同じです。ですからアトピー性皮膚炎で潰瘍性大腸炎もありますという方はいないはずです。全くいないとは言えませんが少ないと思います。要は毒を表に捨てるか、裏に捨てるかです。これが表裏の考え方です。
わかりやすいのは、実証で熱証ですね。実で熱ですから体力があって体温が高い人ですね。プロレスラーとか力士、プロボクサーですよね。虚証のプロレスラーなんていないでしょ。筋トレもしなくちゃいけない、投げられないと練習にならない、しごきもある。実証でないと無理ですよ。エネルギーも使いますから、たくさん食べます、体も大きくなります。昔、ブッチャーというレスラーがいました。額から出血して試合をしていましたが、皆さん額から出血して試合なんかできますか?絶対病院に行って縫ってもらわないと血なんか止まりませんよ。自然治癒なんて無理です。プロボクサーも試合中出血してそのまま続けて試合をしていたら血が止まったなんてよくありますよね、なぜですか。熱証で実証だからですよ。体温が高く、活動性も高いと血液を作る能力も高いです、免疫力も高い、だったらこれが一番良いと思うけど、ここに位置する人は実はあまり長生きしていません。もともと元気があり活動性の高いので血管が傷ついてもすぐ修復します。若いうちはいいけど年を取ると動脈硬化になりやすいのです。脳梗塞や心筋梗塞などが一番多いのはここの人なのです。そもそも高血圧が多いのもここの人です。オリンピックの金メダリストの平均寿命は54歳です。
対極なのが、虚証で寒証、ここの人で多いのは虚弱体質の人です。虚弱体質で若いときは痩せていて体温が低いのですが、歳を取ってくると活動性が低く、甘いものが好きな方が多いので肥満傾向になり、呼吸器疾患が増えてきます。うつ傾向のある方もここには多いです。
実証で寒証の人はずばり現代人です。現代の人は身体を酷使して労働なんてしません。椅子に座りパソコンの前で仕事をしています。最近では、いわゆる肉体労働者と言われる方々でさえも鶴嘴を持って道路工事なんかしません。よって体力はあるのに冷え性で精神的にストレスを抱え込んでいる人が多い。またお風呂に入らないでシャワーで済ます、運動しないでいつも横になって寒い寒いと言って、運動もしないで寝ているのに、冷たい飲み物が好きだなんて言っている人が多いのです。実は癌の患者が一番多いのもここのもここの範疇です。現代人は冷蔵庫を保存のために使わないで冷たくするために使っている人が多いでしょう。冷たいものを好む傾向にあるのも癌が増えている原因です。今、がん患者は2人に1人、3人に1人は癌で亡くなっています。
最後は熱証で虚証です。ここの人は現代人ではもっとも少ないです。なぜかというと空調が発達したからです。今は空調やエアコン、暖房が発達してどこに行っても快適に過ごせますよね。でもここの人はそもそも体温調節が下手です。ですから気候や天候、気温にものすごく敏感です。ですから気象病など低気圧が来るとき頭や膝などが痛くなるなんて人はここに分類されます。また熱証で虚証ですから肌は乾燥します。喉もやられます。今、昨今の天気はけっこう激しいですが、空調があるおかげである程度快適に生活できますが、もし空調や冷暖房がなかったら、生きていくのも命がけですよね。がしかし、そのせいでここの人は熱証から寒証へと移行する人が多いのです。なぜならば、空調が発達したせいで室内温度が常に一定となり、季節感がなくなると、人間は体温を外界に合わせて高く設定したり低く設定したりするのですが、その必要がなくなるせいでやや低めに設定するのです。だから純粋な熱証で虚証は少なくなって、虚証で寒証に移行してしまうのです。
では東洋医学ではこのようにして弁別した病性に対して、熱が下がっているなら上げましょう、エネルギーがなかったら足しましょうということですね。現代医学では鎮痛解熱剤はあっても鎮痛過熱剤とは、免疫上昇剤なんてありません。しかし漢方薬やはり灸にはそうゆう対処法があるのです。どうのように治療していくのかというと、漢方薬ではそれぞれの証に、例えば、実証で熱証であれば、少しエネルギーを落とし、熱を下げましょうとします。それぞれに合った方剤があります。はり灸も陰陽五行論を用いて補法(気を補ったり)や瀉法(気を瀉したり)を行い、あるいはお灸を用いて熱を加えて氣血の流れを整え病気の位置(病位)や病性(病気の盛衰)を改善していきます。
そして最終的には、実証、虚証、熱証、寒証と分けた中心部分、いわゆる“中庸”になるように身体を変えていくのです。中庸に持っていくことで病気を未然に防ぐ、未病治の境地に持っていくのです。
参考文献
吉野 敏明 『オンラインサロン 八綱弁証』より
