検査は現代医学で、治療は伝統医学で(前編)
- pcs9130
- 2 日前
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一般に医療は「西洋医学」と「東洋医学」という対比で語られることが多い。
しかしこの区分は、医学の本質を説明するには必ずしも正確とは言えない。
なぜなら、医学の本質的な違いは地域ではなく方法論にあるからである。
むしろ次のように整理した方が実態に近いだろう。
①科学的分析医学(modern scientific medicine)
②自然的伝統医学(natural traditional medicine)
この二つは「西洋」「東洋」という地理的区分ではなく、医学の成立原理の違いである。
1 科学的分析医学(現代医学)
現代の医療の主流は、科学的方法に基づく分析医学である。人体を細分化し、臓器・組織・細胞・分子レベルまで解析し、画像化し、病気の原因を特定しようとする。
例えば
レントゲン検査
血液検査
CT・MRI
病理検査
遺伝子検査
などは、この分析医学の成果である。
つまり現代医学の最大の強みは
「病気を客観的に可視化する能力」にある。
この点において、現代医学の診断能力は人類史上かつてない精度に到達している。
したがって、検査・診断は現代医学が最も優れていると言える。
私が以前勤めていた病院の先輩からは、
『昔の整形外科と接骨院の違いはレントゲン写真が撮れるか撮れないかの違いだけだよ』と
言われたことがある。
2 自然的伝統医学
一方、世界各地には長い歴史の中で育まれた伝統医学が存在する。
例えば
中国医学
日本の漢方
インドのアーユルヴェーダ
ヨーロッパのハーバル医学
アラブ医学
などである。
これらの医学の共通点は、
人間を自然の一部として捉える医学という点にある。
病気を
気血の乱れ
体質の偏り
自然との不調和
として理解し、身体全体のバランスを整えることを重視する。
この医学は、
長い経験と臨床の蓄積によって形成された経験医学である。
科学万能の時代では、古臭い、非科学的な、時代遅れの医療と蔑まれた医療である。
3 伝統医学は東洋だけのものではない
ここで重要なのは、伝統医学は決して東洋だけのものではないという点である。
例えばヨーロッパでは古くから
薬草療法(ハーブ医学)
四体液説医学
が発達していた。
近代医学が成立する以前、ヨーロッパの医療もまた植物薬を中心とした自然医学であった。
つまり
伝統医学 = 東洋医学ではない。
伝統医学は世界中に存在していた人類共通の医学なのである。
4 20世紀初頭のアメリカ医療の転換
さらに歴史的に見れば、現在のような科学的医学が医療の中心になったのは比較的最近である。
20世紀初頭、アメリカでは医療制度に大きな転換が起こった。その背景には、石油資本で知られるロックフェラー財団による医学教育改革があった。
1910年に発表されたフレクスナー報告を契機に、アメリカの医学教育は
科学実験を重視する医学
薬理学中心の医療
対処療法中心の医療
へと大きく再編された。
その結果
自然療法
植物療法
民間療法
など多くの医療体系は医学教育から排除されていった。
つまり、現在主流となっている科学医学は、20世紀に制度的に確立された比較的新しい医学体系なのである。先の大戦で米国の占領下に置けれた日本は、医療制度も米国と同じ体制に変えられてしまった。余談だが、アジアで鍼や灸を扱う資格で医師、あるいは医師相当の権限がないのは日本くらいである。
5 医学の役割分担という考え方
このように考えると、医学は、
どちらが正しいかではなく、役割が異なる
と理解する方が合理的である。
例えば
現代医学が得意な領域
検査全般
救急医療
外科
感染症治療
伝統医学が得意な領域
体質改善
慢性疾患
未病治療
自律神経系の疾患
自然治癒力の調整
つまり
「検査は現代医学で、治療は伝統医学で」
という発想は、単なる折衷ではなく
医学の特性に応じた合理的な分担
と考えることができる。こうしてみてみると、
現代医学が不得意な分野は、伝統医学が得意な分野であるし、
逆もまたしかりである。
6 これからの医療
21世紀の医療に求められているのは、
科学医学の精密な診断能力
伝統医学の全体的治療観
の融合である。
つまり
分析医学(Analysis)と
統合医学(Integration)
の両輪による医療である。
医学の歴史を振り返れば、人類は長い間、自然医学によって健康を守ってきた。
そして近代になって科学医学という強力な診断技術を手に入れた。
これからの医療は、
「科学で見て、自然で治す」
という新しい統合の段階に入っているのではないだろうか。
