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検査は現代医学で、治療は伝統医学で(後編)

  • pcs9130
  • 3月13日
  • 読了時間: 6分

更新日:3月17日

医療費高騰時代における医療の新しい方向性

近年、日本の社会保障制度は大きな転換点に直面している。高齢化の進行に伴い、医療費および社会保険料は年々増加し続けており、その持続可能性が社会的課題となっている。この問題に対しては様々な制度改革が議論されているが、医療のあり方そのものを見直す視点もまた重要であると考えられる。


筆者はその一つの方向性として、これまで述べてきた

「検査は現代医学で、治療は伝統医学で」

という医療の役割分担の考え方が、医療費高騰問題を考える上でも一つの重要な示唆を与えるのではないかと考えている。

ここでいう「治療は伝統医学で」とは、癌や難病の患者に対して単純にはり灸やマッサージを施せば良いという意味ではない。そのような単純な発想では医療の問題は解決しない。高度な医療技術が必要な疾患に対しては、当然ながら現代医学が中心的役割を担うべきである。


しかしながら、現代の医療費の多くは、必ずしも急性疾患や高度医療のみに費やされているわけではない。むしろ医療費増大の背景には、高血圧、糖尿病、脂質異常症などに代表される生活習慣病の増加が大きく関わっている。

これらの疾患は多くの場合、薬物療法によって長期的に管理されるが、本来は生活習慣の改善によって予防・改善が可能な側面を持つ疾患でもある。すなわち生活習慣病の問題は、単なる医学的問題というよりも、むしろ生活文化の問題でもあると言える。


この点において、伝統医学が持つ「未病を治す」という概念は極めて重要な示唆を与えている。未病とは、明確な病気として発症する前段階において身体の不調を捉え、それを早期に調整するという考え方である。これは現代の予防医学とも共通する理念であり、病気になってから治療するのではなく、病気にならない身体を作ることを重視する医学観である。

さらに伝統医学の思想は、単なる治療技術にとどまらず、生活習慣や食生活とも深く結びついている。いわゆる伝統医療の思想は、同時に伝統食の思想とも密接に関連している。人間の身体は日々の食事によって作られる以上、食生活のあり方は健康に大きな影響を与える。


近年、過剰な糖質摂取や加工食品、精製された砂糖、過度な脂質などが生活習慣病の一因として指摘されている。また小麦由来のグルテンや乳製品の過剰摂取が体質的に影響を及ぼす可能性についても議論されている。こうした食生活の問題を見直し、より自然に近い食生活へと回帰することは、生活習慣病の予防という観点からも重要であると考えられる。

生活習慣病は、やがて心血管疾患や脳血管障害のみならず、癌、慢性腎不全、透析医療など、より深刻な疾患へと進展する可能性がある。したがって医療費の増大を抑制するためには、重症化した疾患への対処のみならず、その前段階である生活習慣病をいかに予防するかが極めて重要となる。


このような観点から考えると、東洋医学が古くから重視してきた「未病を治す」という理念は、これからの医療において極めて重要な意味を持つ可能性がある。鍼灸医学や柔道整復学をはじめとする伝統医療は、身体の微細な変化を捉え、自然治癒力を調整することによって健康状態を維持する医学である。


すなわちこれからの医療においては、

  • 検査と診断は現代医学の高度な科学技術によって行う

  • 健康維持と未病対策は伝統医学と生活文化によって支える

という医療の役割分担が重要になるのではないだろうか。


医学の歴史を振り返れば、人類は長い間、自然と共に生きる生活の中で健康を守ってきた。そして近代において科学医学という強力な医療技術を手に入れた。これからの医療に求められるのは、そのどちらか一方ではなく、両者の長所を生かした新しい医療の構築である。

「科学で身体を見て、自然の理で健康を守る」

そのような医療の実践こそが、医療費高騰という現代社会の課題に対する一つの解決の方向性となり得るのではないかと考える。



鍼灸医学の役割

鍼灸医学は人体を経絡という機能的ネットワークとして捉え、身体全体の調和を回復させることを目的とする医学である。経絡治療では陰陽五行の理論を基盤として虚実寒熱を調整し、生命活動のバランスを整える。

この医学観は、近年注目されている

  • 自然治癒力

  • 予防医学

  • 未病医学

と深い関連を持つ。高齢化社会において増加する慢性疾患や機能的疾患に対して、鍼灸医学は今後ますます重要な役割を担うと考えられる。


柔道整復学の役割

一方、柔道整復学は日本独自の伝統医療として発展してきた手技療法であり、骨折、脱臼、捻挫、打撲などの外傷に対して非観血的に整復・固定を行う医療技術である。

柔道整復術は武道医学の流れを汲みながら発展し、身体構造と機能の回復を目的とする運動器医学として独自の発展を遂げてきた。

近年の医療環境においては、スポーツ障害、慢性的な運動器疾患、高齢者のロコモティブシンドロームなど、運動器に関する問題が増加している。このような社会状況の中で、柔道整復学は

  • 運動器機能の回復

  • 身体バランスの調整

  • 運動学に基づいた姿勢の維持・改善

  • 外傷後の機能改善

  • スポーツ医学

といった領域において重要な役割を担う可能性を持っている。

さらに予防医学の観点からも、身体の機能障害を早期に調整する柔道整復術は、健康寿命の

延伸に貢献する医療として期待される。


これからの医療への提言

21世紀の医療において重要なのは、医学を単純な対立構造として捉えることではなく、それぞれの医学の特性を生かした統合的医療を構築することである。

現代医学は個別の臓器に対し精密な診断能力を提供し、長い歴史の洗礼を受けてきた伝統医学は人体を全体として捉える治療観を提供する。


これからの医療は、

科学で身体を理解し、伝統医学で身体を整える医療へと発展していくべきである。

そして伝統医学は、現代医学の片翼となる医療として、予防医学と機能回復医学、自己治癒能力、免疫力の向上といった分野において重要な役割を担うことが期待されるだろう。


それからもう一つ、健康な方へのインセンティブとして健康保険料の減額も提案したい。

人間ドッグや市町村が行う健康診断の結果によって健康な方には保険料の減額を行い、健康への意欲や努力も評価対象にすることで健康増進に繋げていくのはどうであろうか。


他にも寝たきり老人の問題は死の概念における問題にも踏み込まねばならず、一朝一夕には解決しないが、先送りにはできない問題でもある。



 
 

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