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氣の話しⅠ~なぜ米なのか~

  • pcs9130
  • 2024年8月5日
  • 読了時間: 4分

更新日:2024年8月15日


 東洋医学では、体を動かすエネルギーを“氣”と言い、体全体の潤いを“血”(けつ)と言う。元気がない状態や気力が不足している状態を“気虚”と言い、顔色が悪く、赤みがない青白い顔色をした状態を“血虚”と言う。“氣”によって“血”を体全体に巡らせ、“血”によって“氣”を体全体に漲(みなぎ)らせる。“氣血”は全身を循環、発散して人間の健康を保っている。そして氣血が流れる循環経路のことを経絡と呼び、氣血の出入りをするところを経穴と呼んでいる。鍼灸はこれらを調整して治療に活かす。このように“氣”と密接に関係しているため鍼灸は“氣の医学”とも言われる。


 ところで“氣”とは何だろうか?ここでは“気”という字を旧字体の“氣”と表記するが、現在では“気”と表記している。なぜ旧字体では、“气”の中に“米”の文字があるのだろう?


 世界で最も古い漢和辞典の“説文解字”には、“气”は雲の象形文字で雲の煙りのようなモヤモヤしたさまであると記載してある。そのモヤモヤの象形文字の中に“米”の文字が入っているのは、炊き立てのご飯をイメージしていると言われる。米が炊き上がりかまどの蓋を開けた瞬間、ふわっと立ち上る湯気の感じである。しかし、ただ単に湯気が“氣”だとしたら別に“米”でなくとも良いわけで、お湯だって湯気が上がる。なぜ“米”なのか。ここに米を主食としている我々には納得する答えがある。


 想像してみて、今、あなたの目の前に、1週間何も食べていない空腹状態の人がぐったりして座り込んでいるとする。あなたはその人に何か食べ物を与えようと考える。その時いったい何の食べ物を与えるか?  

① 肉、  ②野菜、  ③ごはん。

食べてすぐに元気が出るものとしたら、糖質である③ごはんである。私も疲れを感じた時、甘いものを食べると元気が出ることを経験している。古代の中国人も同じような場面で、ごはんを食べた人が見る見るうちに元気になる姿を見て、“米”には何か他の食べ物とは違う元気を蘇らせる特別のエネルギ―があると感じただろう。だから、“气”の中に“米”の文字を入れたのではないか。


 鍼灸は、体を動かすエネルギーの源を“氣”とし、いかに体全体に滞りなく巡らせ、潤し養い、そして漲らせることを最重点に考え治療に生かしている。だから気力の充実した、元々持っている“氣”を充満した状態に導き、元氣の状態に導き、自分自身の治す力を最大限発揮させることを目指しているので、多種多様な疾患にも対応できるのである。


 

 ※余談であるが、今現在、世界の人口の多い国ランキングは、1位中国、2位インド、3位米国、4位インドネシア、5位パキスタン、6位ブラジル、7位ナイジェリア、8位バングラデッシュ、9位ロシア、10位メキシコ、11位日本(2023年総務省統計局より)

ベスト11にアジアの国は7か国もランクインしている。そしてランクインしたアジアの国の主食はどの国もすべて米食である。米偏に青と書いて“精”。“精力”とか“強精”などエネルギーが漲っている様子がうかがえる。いかに米食が精力をつける食べ物かがわかる統計だ。これは統計をそのまま出したわけだが、栄養学的に見ても、パンの原料となる小麦よりごはんになるお米の方が、腹持ちが良く、栄養価も高いということは、栄養学の観点からも実証されている。米を食べれば人口も増えるというほど、単純な話ではないが、事実、米の消費量が減っている国は出生率も低下している。


 最近では“太る”元凶のようなイメージを持たれ、“糖質制限ダイエット”なる食事制限をしている人も見受けられる。古来より日本人の食生活を担ってきたお米・ごはんは栄養学的には糖質だが、通常は糖質とは言わず“炭水化物”と言う。これはお米には糖質と食物繊維が含まれているからで、これにより急激な血糖値の上昇を避け、ゆっくり消化し、腹持ちの良い食品となっているからである。また日本人には炭水化物の分解能が高いプレボデラ菌という腸内細菌を保有する人が多く、効率よく消化されるため、他の糖質よりご飯が原因での糖尿病にはなりにくいとされている。糖質制限は、本来ご飯を減らすことより砂糖や果糖、小麦粉等の制限を行うべきだと思うがいかがなものだろうか。

 

 
 

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