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お灸の話しⅡお灸博士原志免太郎先生

  • pcs9130
  • 2024年8月15日
  • 読了時間: 4分

更新日:8月26日

原 志免太郎(はら しめたろう、1882年10月4日 - 1991年6月18日)先生は、かつて男性として日本最高齢だった福岡県の人物である。医者として、100歳で『新しい灸学』を出版し、104歳まで聴診器を持ち、「男性長寿日本一」として108歳257日で逝去した。

 1882年10月4日に、原田種紀・トエの四男として生まれ、父は黒田藩に仕える武士であったが明治維新を体験、県庁の役人、しかし失業と不遇の中、これ以上「子」はいらぬと「締め」、志免太と名づけたが戸籍係の間違いか「郎」が足され「志免太郎」になった。


 高等小学校卒業後、親元を離れ福岡市大浜三丁目(現・博多区大博町)の原三信の医学生となり、独学。(後に原一族の女婿となる。)検定資格を取り京都府立医専(現・京都府立医科大学)に入り、卒業。九州帝国大学医学部で宮入慶之助教授及び大平得三教授の指導を受けながら「灸」(きゅう)の研究に取り組み、結核に感染したウサギに灸をすえたら抵抗力が増すことを突き止めた論文で日本初の「お灸博士」となる(1929年)。(ヒートショックプロテイン研究の嚆矢ともされる。) 1929年開業、1943年香椎原病院設立、院長の椅子を長男に譲った後も104歳まで聴診器を持ち「生涯一医者」を貫いた。


 104歳まで医師として患者をみたこと、灸の研究で博士号を取った最初の人物であること、ホタル日本住血吸虫宿主宮入貝天敵であると突き止めるなどのホタルの生態・飼育の研究、1961年6月天皇陛下にもホタルの卵、幼虫を献上したこと、静岡県の風土病病原体を発見したことなど、業績は多岐に亘る。亡くなる約2ヵ月前に男性長寿日本一となる。


 博士は医師ですがお灸の研究に生涯をささげ、お灸について多くの臨床データを残した。博士は「三里の灸と腰部の八点灸」の合計10点のツボで、全身の治療が可能であり、万病に対応できると確言。先生の研究したお灸の効果・成果は以下に記す。


1.   白血球の数が増加する。

2.   白血球の食菌作用が強くなる。

3.   赤血球及び血色素の量が増加する。

4.   赤血球の沈降速度が速くなる。

5.   血小板が増加する。

6.   血液の凝固性が高まる。

7.   血糖量が増加する。

8.   血液中のカルシウムが増加する。

9.   血清中の補体量が増加する。

10. 免疫体の産生機能が増進する。


 なお、上記の効果は連続施灸すると高まり、連続施灸を止めた後もしばらく持続します。                    ※原志免太郎博士の研究による


 鍼灸師なら知らぬ者はいないのがお灸博士・原志免太郎氏であり、彼は医師でありながらお灸の研究をし、その研究で博士号をもらったのでお灸博士と呼ばれた。1882年に生まれて1991年に鬼籍に入られたので享年は108歳ということになる。104歳まで聴診器をもって診療にあたったと言われているが104歳から108歳まではどんな風に過ごされたのかは不明である。もしもその間も認知症にならず普通に暮らしていたのなら、それこそ仙人の域に達していたと言えようか。お灸博士ならぬお灸仙人と言うべきか。


 原先生は、診療する結核患者はもちろんのこと、神経衰弱、心臓病、膀胱カタル、婦人病、脚気、梅毒、淋病、胃腸病、神経痛、パラチフス、夜尿症、糖尿病、高血圧症、バセドウ氏病の患者とその予防に灸を用いた。妊婦の安産のためにも施灸し、それらの臨床例を『万病に効く お灸療法』にまとめた。自身も独自の灸法を編み出してみずからに毎日60年間も灸を据え続けたのである。


 原先生を自分の学位論文のテーマとしたドイツ日本研究所の主任研究員、クリスチャン・オーバーレンダー氏は西洋医学的手法で『伝統医学』であった東洋医学を吸収しようとした先生らを『統合医』という概念でとらえた。

 

 その学位論文『原志免太郎と灸・二十世紀における伝統医学の復活』は結核の治療と予防における原先生の業績を次のように述べている。


 灸は結核の予防と治療に効果があるという。科学的発見によって、原志免太郎は戦前の日本における灸の復興に、大いに貢献したのであった。灸は戦後新しい結核予防と治療方法が紹介されるまで、日本において結核の予防法として広く使われていたようだ。1947年になっても『灸を基礎としの結核絶対療法』という題のパンフレットが発表されていた。

このように灸の復興は『統合医』が中心となったものだ。

 

参考文献

  • 安藤憲孝『日本一長生きした男』千年書房、1996年

 
 

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