未病を治す
- pcs9130
- 2024年8月5日
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更新日:4月9日
古代中国には物事を天人地のように上中下に分け、その良し悪しを論じる思想があり、医師のランクも同じように分けられていた。五世紀の医書“小品方”に『上医は国を治し』『中医は人を治し』『下医は病を治す』。という格言がある。しかし、この分け方以外にも様々な分け方がある。
『上医は未だ病まざる病を治す』
『中医は已病を診て治す』(中医は発病直後に治す)
『下医は已病を診て治せず』(下医は発病後に治す)
霊枢「逆順篇」では『上医は発病前に治し、発病後は治さない』という記述があり、また、素問「四気調神大論篇」にも「聖人は発病前に治す」という記述があり、また「発病後に治すのは、のどが渇いてから井戸を掘るようなものだ」という比喩まで言っている。同様の記述は難経「七十七難」にもある。
その他、霊枢「根結篇」には「上医は鍼で気を調整和するが、中医は脈を乱し、下医は氣絶えさせ命危うくする」とある。千金方には「上医は(患者の)声を、中医は顔色、下医は脈で判断する」。
共通しているのは、上医は未病を治し、中医は既病を治し、下医は発症後暫くしてから治療にとりかかる。つまり手遅れの時治そうとする。
現代医療に置き換えて考えてみると・・・、
今の日本の医療制度では、病気にならないと病院にかかれないから、未病の段階から診察を受けるということはあまりない。だから良い医者というのは、悪化してから治す医者が腕のいい医者ということになる。しかし本来は悪くなってから治すのは医療技術が今ほど進んでいない時代ではほとんど助からない。であれば、発病する前に治すのが一番良いという考え方がもっと良い考え方となる。つまり未病を治すという概念である。
未病:未だ病ならざるなり。病気ではないがこのままほっとくと病気になる状態。だから健康体ではない状態。“病気には至ってない状態である”
※日本未病学会では未病の定義として、
『自覚症状はないが検査では異常がある状態』
『自覚症状があるが検査では異常がない状態』
これらを併せて未病と定義しています。(両方あれば病気)
※予防とは特定の具体的疾患の発症を防ぐ考え方。未病を治すとは特定の疾患を予防するのではなく心身ともに健康な状態に近づける考え方。
例えば・・・今日の『冷え性』これは通常、病気という概念ではない。あくまで症状名でこれを主訴で病院に行ってもなかなか病気とは認められない。しかし・・・。冷えは万病のもと・・・という言葉もあるようにこの段階で治療するという考え方が東洋医学にはある。体が冷えると内臓の働きが低下して血行が悪くなり免疫力が下がり、肩こり、頭痛、めまい、耳鳴り、動悸、息切れ、神経痛、五十肩、などの自覚症状に移行し、さらに進行すると心筋梗塞、脳梗塞、腫瘍など全身の症状に影響する。
現代医学は、早期発見、早期治療、つまり発病してから治すということですよね。東洋医学は未病です。発病前です。 未病の段階で手を打っていくのが東洋医学の「未病を治す」という考え方。これは突き詰めていくと、常に健康な状態に身をおいて生活するこれが究極の“未病を治す”なのではないだろうか。
