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婦人科疾患の基礎知識 【後編】

  • pcs9130
  • 2025年2月13日
  • 読了時間: 10分

【更年期障害】


 更年期とは、卵巣からの女性ホルモン分泌が減少し、月経不順から無月経となる時期を指す。女性ホルモンのうち特にエストロゲンが減少することにより、のぼせ・発汗・肩こり・頭痛・不眠・イライラ・手足の冷えといったような血管運動神経症状などの、いわゆる“更年期症状”が出やすくなるが、これらが日常生活上不都合を生じる場合を“更年期障害”といい治療を要する。


◎治療

 ホルモン補充療法(HRT)と、それ以外の治療に分けられる。しかしホルモン補充療法以外の治療法は基本的に対症療法から始まる場合が多く、不眠に対して睡眠導入剤や睡眠剤、自律神経失調症に対しては自律神経調整剤の投与である。その中でも漢方薬は有用性の高い治療法である。

 ホルモン補充療法は、内服薬やパッチ剤、ゼリー剤等がある。いったん服用すると症状の改善を認め、調子が良くなるので止め時が難しく継続性の高い治療法である。通常統合型プレマリン(エストロゲン)と合成プロゲストーゲン(ヒスロン、プロベラ)を組み合わせる。

 ただ難点は女性ホルモン剤なのでホルモン依存性腫瘍を誘発する可能性がある。特に多いのは乳がんと子宮体がんである。また副作用として、頭痛・吐き気・乳房痛・不正出血・下腹部痛などの症状を呈することもある。


◎続発する諸症状

 更年期以降は身体に不利なことがたくさん起こってくる。

骨粗鬆症、高脂血症、認知症など詳細は他紙に譲る。

 

【不妊症】


通常、2年以上普通の結婚生活をしていても妊娠しない場合を不妊症と呼ぶが、晩婚化が進む現在では1年以上妊娠しなければ、不妊症として治療を開始する傾向が強い。


 ◎男性の不妊症

 不妊症治療というと、女性の検査から始めることが多いが、中でも精索静脈瘤による造精機能障害は男性因子の30%にのぼり、外科的治療により比較的予後は良好なので早めに医療機関を受けることが肝要である。

男性不妊症の主な原因は、造精機能障害が90%と最も多く、突発性のものや精索静脈瘤による。次に精子が形成されていても輸送路が断たれている精子輸送路障害が5%程度であり、他に前立腺炎、精子成熟異常、性交障害、射精障害など性機能障害がある。また食生活の乱れやストレス、過度な飲酒等で精子の数が減少することはわかっている。生活リズムを正し、過度な飲酒やストレスを避けることで正常な状態に戻すことは可能である。


◎女性の不妊症

 女性の不妊原因は排卵障害、黄体機能不全、卵管因子、子宮因子、頚管因子、その中でも卵管因子が最も多く(約30%)原因不明のケースやクラミジアをはじめとする性感染症から発症する卵管炎、あるいは子宮内膜症、虫垂炎などの腹部の手術歴による。次に排卵障害が10~20%を占め、月経周期や基礎体温超音波検査による卵胞の確認などで診断する。  その他黄体機能不全、黄体化未破裂卵胞、多嚢胞性卵巣症候群、あるいは40歳未満で閉経してしまう早発閉経などがある。子宮因子も多様で検査を通して初めてわかる中隔子宮や双角子宮など子宮奇形がある。一般に自覚症状もなく、日常生活にも支障がないため治療の対象にもならない。しかし、子宮腔が狭いため妊娠しにくく流産しやすい。同じように子宮筋腫、子宮内膜ポリープ、子宮内膜炎なども原因となる。またエストロゲン分泌が少なければ頚管粘液は十分に出ず、妊娠に適した状態は保てない。頚管粘液は通常排卵時にはさらさらとした状態で量も多く精子を通りやすくしている。逆に粘液が濃く、量も少なければバリアとして働く(ピルを飲んでいる状態)。その他、抗リン脂質抗体陽性の免疫異常のため、妊娠はするが生児を得ず流産を繰り返す不育症もある。


◎治療

 治療に関しては検査を行いながら排卵があれば性交のタイミングを合わせていく。性交回数が月に1回、排卵日にやっとというカップルの場合は、理論的に妊娠は可能だが実際には妊娠は成立しにくい。排卵がなければ排卵誘発を行う。

生殖補助医療は1976年英国での“試験管ベビー”成功後から世界中で行われてきた。日本では1992年頃から定着し、体外受精は年間1万人近いので出生児の1%は体外受精ということになる。※人工授精は精液を子宮内に入れる手技で夫の精子を使う(AIH)と第三者の精子を使う(AID)があり、体外受精は過排卵を起こさせて卵子を超音波下でいくつか取り出して精液と混ぜ受精卵を作り子宮内に入れる方法でIVF-ETといい最も広く行われている。

 顕微授精は、卵子に穴を開け顕微鏡下で精子を直接受精させるやり方で、現在はIVFの次の選択肢として汎用されている。

 

◎不妊症は増加しているのか

 昨今の結婚の高齢化や出産希望年齢の上昇により、それまで妊娠するとは考えられなかった年齢層でも、可能性があれば不妊症治療を希望するケースが増えたのは確かだろう。35歳以上の初産を高齢初産というが、1980年では35歳以上の初産は2.1%であったが1996年では4.8%、2020年では20%にまで増加している。つまり新生児の5人に1人の母親は35歳以上で初産ということである。

 出産年齢が上がるということは、それまでに婦人科疾患の罹患率も上がる可能性があり、子宮筋腫、子宮内膜症などが不妊につながる場合もある。またクラミジアによる卵管炎が若い世代に増加しており、治療しないと不妊症は増加していくだろう。

 

◎鍼灸師として不妊症とどう取り組むか

 現在、不妊症に対する究極的な治療として生殖補助医療がある。この技術のめざましい進歩のお陰で、子供を“授かりもの”と考えるより“作る”という発想に変わってきたため、若いカップルにはいつでも妊娠できるという思いが生まれてしまった。また不妊症治療に抵抗がある女性にとって、治療を受けることが当然という風潮がプレッシャーにもなっている。不妊症治療はあくまでも選択肢の幅を広げただけであるということを念頭におくべきである。

ただ治療技術が進歩しメジャーになる一方で、効果は20%程度と期待通りの結果は得られないのが現実である。35歳を過ぎると確実に卵子の質は落ち、妊娠率は下がってくる。令和4年4月から「一般不妊治療」「生殖補助医療」について保険適応になったが、仕事を持っていると連日の注射など通院が困難であり、治療のために仕事を辞めざるを得ない女性もいる。

 様々な問題を抱えた不妊症治療であるが、大切なのはまず良い夫婦関係を築くこと、健康を保つことである。不妊症治療が始まると精神的に追い詰められ、夫婦関係にひびが入ることもあり、何のために治療をしているのか見失うこともある。

その意味で我々鍼灸師は、病院ではサポートできない部分で不妊症治療を提供すべきである。様々なストレスを抱えて来院する人に対し、単に鍼を打つだけではなく、来院する人の心に寄り添い、共感することも大切である。そのためには東洋医学的知識だけではなく、現代医学的知識も必要である。その上で妊娠しやすい体作りへ導く気持ちが肝要なのではないだろうか。治療を続けていくと、何となくふっくら見えて気持ちに余裕がある感じになり、ああこの人はそろそろ妊娠しそうだな、と思うと半年くらいで「体温が下がらなくなりました」とおっしゃる方が数人いた。ちゃんとしたカウンセリングではなくとも、治療中に会話ができる我々の存在は今後必要とされる分野であろう。不妊症治療に鍼灸という選択肢が広がるのは、生殖補助医療と共に、不妊症で悩む方の苦痛をやわらげ、手を差し伸べられる可能性を秘めている。

 

【つわり(妊娠悪阻)】


 月経と月経の間に起こった排卵期に、精子と卵子が卵管膨大部で受精すると、

1週間かけて子宮内に移動し、着床し、妊娠が成立する。つまり通常妊娠0週というのは排卵前の月経時で、妊娠1週目は月経後、2週目が受精で、3週目でやっと着床、妊娠が成立する。4週目には絨毛からhCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)が分泌されるため、尿中hCGを検出し妊娠反応をみている。つまり月経周期が規則的な女性の月経が2,3日遅れれば、着床が起こっているので妊娠反応が陽性に出る。

 そしてこのhCGは嘔吐中枢を刺激するので、つわりが起こると考えられている。

また、流産をするとつわりが軽くなると言われているのは、hCGの量が減るためであるといわれている。とは言ってもつわりは個人差が大きく、ストレスや性格によっても症状が強く発現される。あるいは甲状腺ホルモンの分泌との関係も示唆されているので、一概にhCGの量だけで判断することはできない。

 最終的には妊娠6~9週をピークに症状は軽くなり、時間が解決すると言われて

いるが、つわりの時期は栄養不良と脱水には十分注意したい。

  

【尿路感染症】 


 尿道炎や膀胱炎は男性も同様に発症するが、女性の場合尿道口が膣前庭に開口しており、また尿道が短いため発症しやすくなっている。その他、骨盤内で膀胱のすぐ後ろには月経や妊娠、出産で大きな変化をする子宮が隣接しており、その影響を受けることも忘れてはならない。


◎尿道炎・膀胱炎・腎盂腎炎

 一般的に尿道炎はクラミジアや淋菌などの性感染症が多く、膀胱炎は大腸菌など腸内細菌やウイルスが一般的である。尿道口から膀胱まで達するのが特徴である。膀胱炎は頻尿、排尿痛、尿混濁が3主徴である。トイレの我慢、不潔なセックス、冷えなどを放置することで繰り返し発症する。治療は十分な水分補給と適切な経口抗菌剤の服用である。

腎盂腎炎は腎盂に炎症が波及すると発症する。これも女性に多い疾患で、治療は入院加療の上、点滴で水分補給しながら広域抗生剤を投与する。

 

◎尿失禁

 尿失禁は「社会的、衛生的な問題で、客観的に証明できる不随意の尿漏れ」と定義され、3割が30代から経験していると言われている。これは主として出産と関係しており、出産時に骨盤底筋群とともに尿道括約筋が緩むために起こる。妊娠中から数%の妊婦が既に時折尿失禁を経験している。多数は出産後に回復するが、中にはそのまま年齢を重ねて悪化する場合もある。尿意を感じてからトイレに駆け込んでも間に合わない“切迫尿失禁”、笑った時や重いものを持った時に起こる“腹圧性尿失禁”、またそれらが合わさった“混合型尿失禁”もある。さらに更年期後エストロゲンの低下によって骨盤底筋群が脆弱化し、尿失禁の頻度は増加する。

 切迫尿失禁は神経因性膀胱や不安定膀胱とも呼ばれ中年女性に多い。腹圧性尿失禁は出産回数と関係がある。いずれも予防的治療として“ケーゲル体操※3”が効果的である。それでも無効な場合は薬物療法、外科療法を用いる。

 その他、膀胱下垂や血尿、セックスと排尿トラブル、妊娠中・産後の排尿トラブル等あるが他紙に譲る。

 

 

 

 

※1)PMS(月経前症候群)  ≪米国産婦人科学会及び米国精神学会DSM-Ⅳ-TRより抜粋≫

身体症状…乳房の痛み、お腹の張りや腹痛、頭痛、手足のむくみ

精神的な症状…抑うつ気分、怒りっぽい、イライラ、不安、混乱、引きこもり

※2)PMDD(月経前不快気分障害)

精神的な症状

〇激しいうつ状態、絶望感、自分を卑下する気持ちが生じる。

〇不安、緊張感、イライラ感が高まっていく感じ

〇突然悲しくなる、涙が出る、誰かに拒絶されると酷く傷つく

〇激しい怒りが延々と続く、すぐに怒る、人間関係のトラブルが増える。

〇仕事や学校、友達に対する興味が無くなる。

〇物事に集中できない。

〇すぐに疲れる、倦怠感、気力が湧かない。

〇過食、あるいは特定の食べ物が欲しくて我慢できなくなる。

〇過眠あるいは不眠。

〇どうにもできない、何かに圧倒される感じ。

〇身体症状、体重増加など。

※3)ケーゲル体操

①膝を立てて仰向けに寝る。

②骨盤底筋を5~10秒締める。(肛門や膣、尿道をギュッと引き締める感じで肩やお腹、腰の力は

抜く)腰を浮かせて行うのも効果的である。

③    骨盤底筋をしばらくゆるめる。腰を浮かせて行うのも効果的である。

*①~③を50回位繰り返す。

 

【参考文献】

疾患別治療大百科シリーズ7産婦人科疾患 医道の日本社 2004年4月23日初版2刷

生理のミカタ  バイエル社 2024年5月31日Last updated

医道の日本(7)妊鍼治療最前線 2018年7月号

 
 

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